雇用保険や労災保険などで総額約567.5億円の支払い不足が発生していると
発表しました。
対象者は延べ約2000万人。来年度予算案を修正して不足額を追加で支払う方針で、
来週にも修正予算案を閣議決定する予定です。
●毎月勤労統計とは?
このメルマガでも、毎年8月の雇用保険の基本手当日額変更の際に、
「前年度の平均給与額(「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額)
が前々年度と比べて増減したことにより、変更される。」
旨のお話を何度かさせていただきました。
毎月勤労統計調査の結果は、国内総生産(GDP)の算定に使われるだけでなく、
雇用保険の基本手当、雇用継続給付(育児休業、介護休業、高年齢)
労災保険の遺族(補償)年金、障害(補償)年金、休業(補償)給付等の
各種給付金の計算の基礎となります。
いわば、国の基幹統計のひとつです。
●調査対象は?
調査対象は全国の約3万3000事業所(従業員5人以上)で、
従業員500人以上の事業所は全て調査しなければならないのに、
東京都内については対象約1400事業所のうち500程度しか調査していませんでした。
厚生労働省内部では、すでに昨年に不適切な調査手法が発覚していて、
昨年1月分からは、正規の調査規模に合わせるために補正をかけたデータを公表値として
発表していたということです。
その補正の方法等は、今現在明らかにされていません。
●その影響は?
厚生労働省は、
(1)雇用保険関係
・「基本手当」、「再就職手当」、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」などの
雇用保険給付を平成16年8月以降に受給された方
・ 雇用保険と同様又は類似の計算により給付額を決めている「政府職員失業者退職手当」
(国家公務員退職手当法)、「就職促進手当」(労働施策総合推進法)
(2)労災保険関係
・ 「傷病(補償)年金」、「障害(補償)年金」、「遺族(補償)年金」、「休業(補償)給付」
などの労災保険給付や特別支給金等を平成16年7月以降に受給された方
(3)船員保険関係
・ 船員保険制度の「障害年金」、「遺族年金」などの船員保険給付を
平成16年8月以降に受給された方
(4)事業主向け助成金
・ 「雇用調整助成金」の支給決定の対象となった休業等期間の初日が
平成16年8月から平成23年7月の間であったか、平成26年8月以降であった事業主
以上の対象者について、追加支給の可能性があるとしています。その額は、
雇用保険は各種給付について一人平均1,400円
労災保険では、年金で一人当たり平均年間約9万円、休業の給付で1カ月平均300円
とのことです。
追加支給の総額は、約567億円になる見込みです。
厚労省は、住所の記録が残っている人たちには手紙を送り、全員への支払いを
目指すとしています。
ただし、追加支給が始まる時期はまだ未定です。
厚労省の担当者は、支給にはコンピューターシステムの改修などが必要で
「相当の時間がかかる」と話しているとのことです。
●心当たりのある方は
厚労省は、11日から相談窓口を設置し、相談に応じています。
・雇用保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-807
(※事業主向け助成金の問い合わせも含む。)
・労災保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-824
・船員保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-843-547 又は 0120-830-008
・受付時間 平日8:30~20:00
となっています。
●西尾はこう思います
雇用保険の基本手当、労災の遺族年金、事業主対象の雇用調整助成金
どれをとっても、対象者のとても大変な時期を支える大切なお金です。
その計算の基礎となる統計調査に不正があったという事実は、とても重いです。
東京都は物価も高いので、給与も当然高く、その中でも従業員数500人以上
の事業所であれば、勿論給与は平均の上を行くでしょう。
事業所すべてを調査するべきところ、3分の1しか調査しなければ、
当然平均値は正しいものではないことは、私でもわかります。
平成16年(2004年)に、
だれが、何の目的で指示したのか、解明は難しいかもしれません。
この問題については、
・国の調査に対する信頼が失われたこと
・給付金の追加支給の必要性により、予算措置が必要なこと
・追加支給事務に、人件費、システム改修費、各種通信費が必要となること
等々、損害というかダメージは大きいです。
厚生労働省の自浄及び自助努力に期待します。