★保険&年金基礎知識〜脱退手当金を考える〜
●京子さんのケース
昭和23年10月生まれの京子さんは、昭和42年に高校を卒業、陶磁器
メーカーに就職、昭和50年まで8年間厚生年金の被保険者として
働き、その後退職、独立して陶芸作家となりました。
京子さんは自営業なので、国民年金の第1号被保険者として国民年金の
保険料をずっと納めてきています。
そして昨年10月58歳になりましたので年金の加入記録が送付されてきて
みてびっくり!昭和42年からの昭和50年までの期間の厚生年金の
納付記録がないのです。
60歳になったら、8年間分の厚生年金が!と楽しみにされていた京子さん
早速調べてみました。
その結果、その期間の分として脱退手当金を受け取ったことになっていたことが
判明しました。
でも、京子さん、脱退手当金を貰った記憶がありません。
社会保険事務所の間違いでは?と再度調べてもらいましたが、ミスはないとの
こと。
それで、会社員当時一緒に働いていて、同じような時期に退職して、京子さん
とは違い結婚して専業主婦になった同僚に連絡、確認をしてみました。
その同僚曰く
「脱退手当金?私もそんなお金貰ってへんけど、でも総務のTさんが言うて
はったえ。あんたは厚生年金ずっと納めてはったから退職金に上乗せがある
って。」
そこで、当時勤めていた会社に確認して見たところ、昭和50年当時、退職
結婚する女性は再度就職はしないだろうと考えて、会社が退職金支給と
同時に厚生年金の脱退手当金の裁定請求手続きもしており、
退職の際に説明していた「と思う」ということでした。
京子さんは、当時その説明を受けた記憶はなく、またその前に脱退手当金の
支給を受けるか受けないかの意思確認もされなかったそうです。
そこで、社会保険庁に当時の脱退手当金を返却するので、改めて8年分の
厚生年金を支給してもらうことは出来ないのか問合せをしてみましたが、
それはできないという返事でした。
この8年間については、もう脱退手当金をもらっているので、年金の金額には
反映されないが、年金を貰う際の資格期間に年数には入りますよ、と
云われたとのことです。
*所謂合算対象期間(=カラ期間)ですね。
京子さん、なんとしても納得できません。
で、どういうことなん?説明して!というお話が有りました
●脱退手当金の歴史
厚生年金の場合、昭和36年4月前までは一定の要件の短期間加入者
については、年金制度間で年金を通算できなかったため「脱退手当金」を
支給するという制度がありました。
昭和29年、女子については厚生年金被保険者期間2年以上で
「脱退手当金」を支給するということになりました。
昭和36年に国民年金制度が出来てからは、厚生年金を脱退しても
国民年金に加入することが出来るので、脱退手当金は原則60歳以上
5年以上厚生年金に加入していた人のみになったはず!なのですが...。
昭和40年、この「脱退手当金」が女性限定で復活。その後経過措置
もあり、この制度は昭和53年5月まで経過措置として残っていました。
その理由は、当時働く女性は結婚と同時に退職、専業主婦となる場合
が殆どで、また女性の再就職はかなり難しいと思われていました。
実際には、昭和40年代後半には結婚後働く女性も増え、女性の
転職・再就職もかなり多くなっていたのですが。
京子さんにその説明をしたところ、
「う〜〜ん、会社辞めるとき引き止められて。独立するっていうとトラブルに
なるかな?と思って結婚するて嘘ついたん思い出したわ。
そんで、好意で脱退手当金の手続きしてくれたんかな?
小さな親切、大きなお世話やったなあ...。
まあ、トラブル思ってほんとのこと云わへんかった私も悪かったんやけど。」
とため息をついておられました。
●以下の方は、要注意です!
昭和29年4月〜昭和36年3月まで
昭和40年6月〜昭和53年6月前まで
以上の期間に厚生年金のある会社で、2年以上被保険者として働いて
いた女性。
ご自分の年金記録を確認することをお勧めします。
会社が本人に確認をせずに、脱退手当金の裁定請求をし、本人に
渡していたケースがあるようなのです。
殆どのケースが善意なのですが、会社からの退職金といってこの「脱退手当金」
を渡していた悪質なケースも現実にあったということです。
私が、会社員として働き始めた時、
結婚のため退社する際に、
「どうしようかな、年金もらうのはまだ随分先のことだし、結婚準備にお金もかかる
から一時金をもらっておこう。」
とこの制度を利用した同僚が沢山いました。
今回の年金騒動に直接関係はなく、会社と個人の問題なのですが
年金記録が「ない」というケースに該当した女性の方の中には、
このような制度による場合もあることをご紹介したく
今回の題材に選びました。