厚生年金と健康保険は、コンビの保険です、というお話をしましたが
雇用保険と労災保険は、その保険料の支払いこそ年払いで一緒ですが
対象者は違います。
まずは、労災保険から。
●労災保険の適用について
公的な保険の中で、一番間口の広いのが、この労災保険です。
労災保険の対象となる事業所(会社やお店等)は、
1人でも人を雇っている「適用事業」で「働いてお給料をもらって」いる人
すべてです。
この場合の
「適用事業」とは?
農林水産業の一部は任意とされていますが、
一般的には、人を1人でも雇っていれば労災に入る義務が事業主には
あるといえます。
「対象労働者は」?
年齢、国籍は関係ありません。
たとえ、外国人の方がヴィザなしで不法就労していようと、
働いている現場で事故にあい、労働監督署長が労働災害であると
認定すれば、労災保険は適用されます。
労災保険は「保険」です。
そして、事業主が保険料を支払っていますが、
実際に労働災害について補償を受けるのは労働者ですので
「被保険者」という概念は労災保険にはありません。
それでは、労災の対象とならない人とはどんな人なのでしょうか?
・個人事業の事業主
・法人の代表取締役
・法人の取締役(労働者性のある方を除く)
・国家公務員(現業且つ非常勤を除く)
・船員保険の被保険者(船員保険は労災もカバーする総合的な保険ですから)
等です。
しかし、個人事業主と法人代取・取締役については、特別加入という道も
あります。
●雇用保険の適用について
雇用保険は、労災に比べると、その網の範囲は狭まっています。
雇用保険の対象となる会社(や商店)は?
労働者を一人でも雇っているところです。
*個人経営で5人未満の農林水産業を除く
雇用保険の被保険者となる人は?
雇用保険の適用事業で働いて「給料をもらって」いる人
です。
以下のような人は対象となりません。
・個人事業主
・法人の代表取締役
・法人の役員(労働者性のある方を除く)
・昼間学生
(卒業見込み証明書を持って就職した人、休学中の場合、
専修学校等で出席日数に決まりがなく他の人と同等に働いて
いる人などは対象となります)
・生命保険の外交員等
・家事使用人
・同居の親族
(事業主の指揮命令に他の労働者と同様に従っていること、
終業の実態が他の労働者と同様である、取締役ではない
場合は、被保険者となります)
・65歳に達した日以降に雇用された人
・日雇労働被保険者、短期雇用特例被保険者に該当する人
等々です。
●西尾の解説
厚生年金と健康保険、労災保険と雇用保険
網がかかっている人が
微妙に違うのがお分かりになりましたか?
きわめて大雑把に言ってしまうと
・人さんのところで働いてさえいれば、網がかかるのが労災保険
・人さんのところで、65歳以下で就職して学生バイトじゃなくて、
日雇労働や季節労働の形以外で働いていれば網がかかるのが
雇用保険
・常時5人以上の一定の事業か、人を1人でも雇っている法人で
働く70歳未満の人で、常時雇用されている人が厚生年金
・常時5人以上の一定の事業か、人を1人でも雇っている法人で
働く75歳未満の人で、常時雇用されている人が健康保険
ということになります。
バイトに行っていて、通勤の時に事故にあったら、会社が労災の
手続きをして、療養給付と休業給付を出してくれた。
労災の保険を掛けていてくれたのだから、他の保険も入っていたはず。
なので調べてほしい、というご相談がありました。
もしかしたら、というお気持ちはわかりますが、
労災以外は、全て保険料は事業主と被保険者がそれぞれ半額か
それに近い額を負担しています。
給与明細書を確認すれば、保険に加入していたかどうかはわかります。
まずは、当時の給与明細書を確認してみてください。
というお話をさせていただきました。
保険は、それぞれ対象が違うので、
ひとつの保険の対象となっていたから、その他の公的保険も全て
入っているはず、とは言い切れないのです。
また、バイトでも社会保険に加入させる事業所さんもあれば、
比較的大きなお商売をなさっていても、労災保険にも
未加入のところもないとはいえません。
仕事の内容を確認することも大切ですが、
働く事業所さんの福利厚生に対する姿勢を確認することも
就職・転職の際には必要だと思います。