私の事務所のある四条烏丸界隈は、京都のビジネス街です。
春、4月、毎年毎朝、新入社員の方が真新しいスーツを着て会社に急ぐ光景を
見ます。
長い社会人生活の第一歩を踏み出したその姿は、若々しくも、頼もしく思えます。
頑張れ、フレッシャーズ!
いまどきのフレッシャーズは、アルバイト経験もあり、たくましいと聞きます。
でも、社会人になって、はじめてのお給料は特別です。
待ち遠しい給料日。
初月給をどう使うか、色々計画されている方も多いでしょうが、その前に、
大切なのが、給与明細書の確認。
給与明細書の見方が今回のテーマです。
今更、人には聞けないベテラン社会人の方もどうかご参考に。
私も、今からうん十年前に給料を頂きましたが、何を根拠にこんなに私の稼ぎ
から引かれるのか、さっぱりわかりませんでした。
・社会保険料
厚生年金と健康保険の保険料ですが、これは支給額に率を掛けるのでは
なく、支給額が該当する等級(ゾーンですね)から標準報酬月額を決定し、
これに率をかけていきます。
厚生年金の場合、例えば、支給額が、23万円であれば標準報酬月額は
24万円ですから、この額に15.35%をかけてそれを、会社と折半します。
基本給等が著しく上下しない限り控除される社会保険料が、月々によって
変動することはまずありませんが、年に1回定期的に、適正化のために
見直し(定時決定)を行い、新たな標準報酬月額を決定して、
9月から翌年8月までの保険料計算の基とします。
健康保険料は、厚生年金と同様に標準報酬月額に8.2%(40歳未満の場合)
をかけ、会社と折半します。
社会保険料は、全国同率の保険料でしたが、昨年10月に健康保険が
政府から都道府県別に設置された「協会けんぽ」が運営することになりました
ので、率が地域により違うという可能性が将来的に出てくることも否定
できません。
・雇用保険料
一方、雇用保険料は、支給額に直接率を掛けるので、月々により保険料
が違うことがあります。今年は、1年間の暫定措置として、率が引き下げられ、
本人負担は、一般の事業では0.4%を支給額にかけます。
なお、業務上の災害、通勤災害を補償する労災(労働者災害補償保険)
は、会社の全額負担ですので、個々の給与から引かれることはありません。
・所得税
所得税は、支給額から社会保険料、雇用保険料を控除した額から計算
されます。
予め会社に提出した扶養控除等申告書で、『給与所得の源泉徴収税額
表』により控除後の額の該当するゾーンの「甲」欄から源泉徴収税額を求め
所得税として控除されます。
申告書の提出がない方等は「乙」欄から税額が決定されます。
・住民税
住民税は、会社が市町村に提出した「給与支払報告書」により
計算されます。
新入社員の方の場合は、入社1年間は控除されませんが、2年目より自分で
納付する方以外は、バッチリ徴収され、退社後も納付しなければいけません。
★これが、結構侮れない額ですので、新入社員以外の方でも、退職をお考
えの方は、退社後の支出計画に含めておいて下さい)
●西尾の解説
で、控除額全て引かれて、手元に残った額がこれからの1箇月の生活資金
となる訳です。
他に引かれる項目もありますが、会社によってそれぞれです。
財形貯蓄、労働組合費(会社と組合が協定を結んでいる場合)、従業員食
堂での食事代、社員販売等々。
それと、社会保険料の控除についてですが、
当月控除=その月のお給料から、その月分の保険料を引く
例:4月分給料から4月分保険料を引く場合
翌月控除=その月の給料からは引かず、翌月分支給の給料から引く
例*5月分給料から4月分保険料を引く
どちらもあります。
退職の場合、自分で混乱し、厚生年金保険の加入期間を誤解してしまう
ケースもありますので、確認しておきましょう。
3月27日、国会で「改正雇用保険法」が成立しました。
今回の改定は、非正規労働者の方達の支援強化にあります。
今まで、雇用保険加入条件にあった
「1年以上の雇用が見込まれる者」⇒非正規社員の場合は「6箇月以上の雇用が見込まれる者」に、
基本手当て(失業手当)の受給資格を
「雇い止め」の場合は、1年の被保険者期間から6ヶ月の被保険者期間があれば
よい等、
増加が続く非正規社員の方達へのセイフティーネットを拡大した改正となりまし
た。
法律が整備されても、現在の雇用形態はめまぐるしく変化しています。
いたちの追いかけっこにならないよう、
働く側しっかりとご自分の労働条件を確認し、いざというときに備える必要が
あります。
今回の雇用保険の改正ですが、私には納得がいかない部分があります。
今現在、困っている非正規労働者支援を考えるのは当然のこととは思います。
しかし、今まで、きっちり雇用保険料を納めてきた正規労働者の中にも、
支援を必要としている人はたくさんいます。
大体、雇用保険の半額近くを負担してきた労働者が、
なぜ、自己都合で退職する場合3カ月もの給付制限があり、
基本手当の支給を待たなければいけないのでしょう?
会社を退職することのどこがいけないのか?
職業選択の自由があるなら、会社を退職するのも自由のはずです。
今の時代は、無責任に職を転々とし、雇用保険で食いつなぐ、
というような時代ではありません。
また、そのようなことのないよう、制度上歯止めはきっちり掛かっています。
それに、そんな人がいたとしても、ほんの一握りです。
次の雇用保険法の改正の際には、是非自己都合退職の場合の
給付制限について、考慮していただきたいと思っています。