やっと夏らしいお天気になったと思うと
もう、朝夕の風はひんやりしてきました。
今年は、実質的に豪快な夏はなかったような気がします。
今回は、年金を受給するための資格期間のお話です。
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8月末には衆議院選挙です。
各党のマニフェストに、年金の受給資格期間を10年に短縮する案が検討されて
います。
日本の年金を受け取ることが出来る権利(受給権)は、
原則的に年金加入25年が必要となっています。
(生年月日、加入年金制度により短縮措置も講じられていますが。)
各国の期間と比較しても日本の25年は長いと実感します。
欧米諸国は、5〜15年の期間ですし、オランダ、フランス等は
基本的にありません。
そもそもこの25年という期間はどのように決定されたのでしょうか。
昨年5月に開催された第8回社会保障審議会年金部会の資料によると
次のように説明されています。
受給資格期間を25年としたのは(国民年金の発足当時)、
1. 厚生年金等が受給資格期間を20年としているのに対して、
40年加入を原則とする国民年金において、
受給資格期間を25年としても特別に長いとは判断されなかった。
2. 低所得者には免除制度が設けられていて、25年と定めても
低所得者に特に不利になるとは考えられなかったこと。
3. 当時の所得水準をみたときに、年金という名に値する額の
支給を確保するには、25年の拠出期間を必要としていたこと。
以上を考慮したため、だそうです。
ふ〜ん、余り確かな根拠はなかったのね。
というのが正直な感想。
日本の「国民皆年金」制度とは違い、諸外国の資格期間が短期なのは、
無収入の無業者などは公的年金制度の強制適用対象とはされていない国が
多く、一定以上の収入のある時期のみしか加入期間としてカウントされないため、
比較的短い期間でも年金受給権を与えないと、掛け捨てや無年金者を生み出
す要因があると考えられます。
で、日本でも受給資格期間を短縮する場合、今よりも年金の受給資格が
得やすくなるという意見に対して、以下の問題が論点となるだろうということです。
1. 短期間で資格を得ることが出来るとなれば、保険料納付意欲が低下し、
未納問題が一層深刻になる。
2. 低額の年金者を増加させることにつながりかねず、結果的に公的年金に
対する信頼が揺らぐことになるおそれはないか。
3. 諸外国では無業や低所得者については適用除外、任意加入とされており、
日本とは制度の基本的な考え方や仕組みが異なっていることをどう考えるか。
4. 受給資格期間を短縮した場合、資格期間分だけの保険料納付者と、
40年全て免除を受けた者との年金額のバランスをどう考えるか。
●西尾はこう思います
1.の論点については、保険料収入減が、世代間扶養を原則とする現行制度の
根幹の問題に大きな影響を与えることも背景にあるのかという気がします。
20歳代の方たちに年金の説明をするときに、彼等は
「うわ〜、25年も払うの。途中で払えなくなった時は掛け捨てになるの??」
と必ず驚きます。
免除制度の説明をしても、まず25年と言う期間の長さに最初から拒否反応が
あります。
オール・オア・ナッシングの感覚です。
拒否反応を解消する意味では10年という期間は妥当かと思います。
2.の論点については、自己責任の観点からみれば当然の帰結であり、
そこまで考慮しなければならないかなと感じます。
3.については意見なし。
4.については、10年で資格期間が出来て、その後支払いをしなかった場合の
年金月額は、16500円、一方40年全期間免除では33000円(平成19年価額)と
計算されており、確かに年金額にアンバランスを感じます。
将来、無年金者の問題を解消するためにも、選挙期間だけのリップサービスに
終わらず、期間短縮についての議論が活発になされることを望みます。
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★トピックス〜社会保険料の滞納〜
社会保険料の滞納については、延滞金率14.6%が課せられていますが、
この率の引下げが決定されました。
現行の制度では、保険料を納付期限までに納付しない事業主には、
督促状が送付され、
指定した期限までの納付がされなければ、従来の納付期限の翌日から実際に
納付された前日までの日数で計算された延滞金を支払わなければなりません。
平成21年1月1日からは、税の延滞処理と同様に、一定の日数について
は、14.6%ではなく4.5%の延滞金率で計算することとされ、
その期間は納期限から3箇月間となります。
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