★保険&年金基礎知識〜会社が倒産したら、給料は?〜
●未払い賃金立替え払い制度の歴史
この制度は、昭和56年(1976)年7月に
「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づき、施行されました。
なぜ、この制度が始まったかと言いますと、昭和48年のオイルショック後の
景気の低迷で、賃金が未払いのまま倒産する企業が多く、そのため、
退職を余儀なくされた方々の生活は脅かされていたのです。
労働基準法では、賃金の支払いの義務を事業主に課しています。
そこで、支払い能力が失われる「倒産」という現状に対して、
現実的な救済措置の創設が求められ、誕生したのがこの制度です。
●この制度は、労災保険の労働者健康福祉事業の一環です
この救済制度、基になるのは、事業主がその保険料を負担している
労災保険。
その、健康福祉事業の一つとして行われています。
実施している機関は、労働者健康福祉機構です。
●対象となる事業主は
労災保険の一事業として行われる制度ですので、
対象となる事業主は、その事業が労災保険の適用事業に該当する
事業です。
*労災保険の加入の有無、保険料の納付の有無は問われません。
また事業主は、以下の要件が必要です。
・1年以上の事業実績があること
・法律上の倒産(破産宣告、特別清算開始等の決定があったこと)
・事実上の倒産(中小事業主に限られ、事業活動が停止し、再開の見込み
がなく、かつ賃金支払能力がない状態になったことについて、労働基準監督
署長の認定があった場合)
●労働者側の要件
裁判所への破産申立て等(労働基準監督署長認定の場合は認定申請)
が行われた日の6箇月前から2年間に退職した労働者で、2万円以上の
未払い賃金があること。
*申立てが平成20年9月15日であれば、平成20年3月15日から平成22年
3月14日の間に退職した人ということになります。
また、労働者の勤務形態に関係なく対象となりますので、
パート、アルバイト、勿論外国人の方もこの制度の対象となります。
●対象となる賃金
月毎に支払われる給料、未払いの退職金で、
退職日の6箇月前の日から労働者健康福祉機構へ立替え払い請求の
前日までに支払日が到来している賃金です。
●対象とならない支給金等は?
ただし、賞与、解雇予告手当、恩恵的に支払われる祝金、功労金、
実費弁償としての旅費などはこの制度の対象とはなりません。
●いくら、立替え払いしてもらえるの?
立替え払額は、未払い賃金の全額ではありません。
未払い賃金総額は、退職日の年齢に応じて総額の上限があり、
立替え払いは、その8割となっています。
45歳以上 立替え 上限額296万円
30歳以上45歳未満
176万円
30歳未満
88万円
制度発足当時は、年齢に関係なく、立替え払い上限額は36万円だった
のですが、昭和63年から、年齢別上限が設けられることになりました。
●8割までの理由
立替え払いされる賃金は、退職所得とみなされますが、退職所得控除が
認められますので、8掛けの金額では、多くの場合課税されません。
また、社会保険料を控除しない額の8割ですので、ほとんど手取りに近い
額となります。
●実際の手続きは?
手続き先は、下記の書類を労働者健康福祉機構へ。
・法律上の倒産の場合
破産管財人に申請し、
立替え払い請求書と退職所得の受給に関する証明書を交付して
もらいます。
・事実上の倒産の場合
事業所を管轄する労働基準監督署で、認定申請をすることになります。
●西尾はこう思います
あってはならないことではあります。
また、あってほしくないことでもあります。
しかし、会社が危ない、という噂があった場合は、
タイムカード、出勤簿のコピー、なければ
ご自身で、出勤日と始業・終業時刻の記録を残しておく、
給与明細書は取っておく、
労働条件等について書面で会社から交付されたものは
取っておく、等のことをお勧めします。
また、未払い賃金の立替え払い制度は
明日のお米代をすぐ補填できる、というような迅速なものでは
ありません。
やはり、最低限の貯蓄は必要だと思います。
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★トピックス〜出産育児一時金の増額〜
出産育児一時金が42万円に増額されます。
平成21年10月1日以降の「産科医療補填制度」に加入の
医療機関で出産された場合、医療保険各法から支給される
「出産育児一時金」が、42万円に増額されます。
この制度は、平成23年3月31日までの出産に適用されます。
従来の38万円から、42万円に増額となった理由は、
出産費用の平均が42万円であるから。
また、出産費用の支払いに一時金を充当する制度が以前からありましたが、
今回は、この制度をもっと便利に、いろんなところを行ったり来たりすることなく、
医療保険機関の窓口だけで支払が済むようになりました。
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