11月も半ば、昼間はぽかぽか暖かくても
朝夕は、冷え込みます。
そんなときの通勤は、ちょっと辛くなってきましたね。
今回は、そんな通勤時に、交通事故や、駅の階段で転んだりして
怪我をしてしまった場合、のお話です。
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●通勤災害が補償されるまでの歴史
昭和22年に施行された「労働基準法」には、
業務上の事故においての事業主の補償責任について規定しています。
それと同時に、「労働者災害補償保険法」(労災保険)を施行する
ことにより、上記の事故の場合の事業主の金銭的負担を代行する
機能を確立させました。
当初は、業務上の災害についてのみの補償給付でしたが、
労働者の通勤災害の保護についての議論がなされ、
通勤は就労と密接な関係があることから、
昭和48年に労働者災害補償保険法が改正され、
通勤災害に関しても保険給付が行われるようになりました。
●通勤災害と労働災害の違い
通勤災害と労働災害、違うのは言葉だけ、ではありません。
実際の運用に関しても違う点があります。
・通勤災害には、使用者の補償責任はない
医療機関で受診する場合、
業務上の災害は、療養補償給付
通勤災害は、療養給付、で
通勤災害には、補償の文言がありません。
なぜか?と言いますと
業務上の災害は、労働基準法で規定する使用者の災害補償責任
があるのに対し、通勤災害は使用者の災害補償責任がないことによります。
・通勤災害には、休業開始後3日間の休業補償はない
上記から、業務上の災害では、休業開始後の3日間について、
使用者の補償責任を義務付けていますが、
通勤災害の場合は、使用者に補償義務はないので、
この休業補償はありません。
・通勤災害は、メリット制の対象にはならない
わかりづらいと思いますのが、これが意外と重要な点ですので
ご説明しますね。
業務上の災害が、使用者の重大な過失によるものの場合、
法律上、使用者への費用請求も謳われています。
また、労災では、災害防止義務を履行している事業主に対し
一定の要件をクリアすれば、労災の保険料率を低減しています。
つまり、大雑把に言うと、業務上の災害を防止する努力をし、
業務上の災害が少なければ、労災の保険料が安くなる、というわけで、
これをメリット制といいます。
通勤災害は、労働者は使用者の支配下にで起きることではなく、
使用者に災害防止義務が課せられているわけではないので、
このメリット制の対象となる災害ではありません。
・通勤災害で休んでいる期間に要注意
労働基準法では、「業務上の災害療養する期間とその後の30日間」は
解雇することができない解雇制限期間ですが、通勤災害の場合には、
この制限はありません。
また、年季有給休暇の発生要件である、8割の出勤について、業務上の災害
の場合は出勤をしたものとして取り扱うのに対し、通勤災害の場合は出勤扱い
にはなりません。
●会社に届けた通勤経路でなくては通勤災害にならないの?
まず、通勤の定義から。
通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所等(就業の場所から他の
就業の場所も含む)への移動を、合理的な経路及び方法により行うことで、
業務上の性質を有するものを除く、と規定されています。
マイカー通勤禁止なのにマイカーで会社に通勤したときの事故、
会社に届けた経路ではない路線で事故にあった、定期があるが知り合いに車で
送ってもらった場合など、通勤災害になりますか?というご質問をいただきます。
解釈例規では、「住居と就業の場所等の間を移動する場合に、一般に労働者
が使用すると認められる経路及び手段等いうものである。」とされ、道路工事や
交通渋滞を迂回するためであれば、その行為は通勤中の労働者であれば、
就業のためにとらざるを得ない経路であるので、複数の経路があったとしても、
合理的な経路であり、
通勤方法については、「鉄道、バス等の公共交通機関を利用、自動車、
自転車等を本来の用法に従って使用する場合は、被災した労働者が
平常用いているか否かにかかわらず、一般的に合理的な方法と認められる。」
と規定されています。
ですので、マイカー通勤は社内規定違反ではあるかもしれませんが、それを以て
通勤災害として労災の給付を行わないということにはなりません。
●西尾の解説
ごく稀にですが、
「会社が、労災の申請をすると労災の保険料に響くから、と言って、通勤で
転んで骨折したのに、健康保険にしとけと言うので...。」というようなお話を
聞きます。
上で、メリット制のお話をいたしましたが、通勤災害で労災を申請しても、
労災の保険料が高くなることはありません。
万が一の時のために、覚えておいてくださいね。
今、二つのお仕事を持って頑張っておられる方が増えました。
こんな事情から、労働者災害補償保険法が平成18年に改正され、
住居と就業の場所への移動のみが通勤ではなく、
就業の場所から、次の就業の場所への移動も通勤と認められることに
なりました。
たとえば、こういうことです。
週5日、A社で9時から17時まで、経理事務。
隔日、B社で20時から22時まで、データ処理。
この場合、A社からB社に向かう場合の事故は、
B社での労災となり、休業した場合に支払われる給付額も
B社での賃金を基に計算されます。
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★トピックス〜確定申告に向けて〜
これは、確定申告をなさる方への、アドバイスです。
先日、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書が届きました。
10月1日付け発行でした。
確定申告に必要な書類です。
納付額と見込み額と合計額がプリントしてあり、申告書に添付して
控除を受けることになります。
毎年、納付額と見込み額、合計額が記載してあったのですが、
今回、末日納付が遅れ1日に納付したため、納付額が7月分までで、
見込み額に記載がありませんでした。
そんな方のためには、8月以降の納付書を添付するか、
または、社保庁の控除証明書専用ダイヤル(0570−070−117)に
連絡(平成21年11月2日〜平成22年3月13日まで開設)すれば、
証明日以降の納付額で控除証明書を発行してくれます。
1日遅れで手間がかかってしまいました。やっぱり納期内に納付しようと
真剣に考えました。
ちょっとなさけない話ですが、皆様のご参考になればと思い
白状した次第です。