男女差別、昨今は表面上は殆どありません。
特別な職種を除いては、就職差別も、もう見かけません。
しかし、労働者災害補償保険法の認定で、
男性と女性では、労災の障害等級が違うというケースがありました。
今回は、その労災の、障害認定における障害等級のお話です。
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5月27日、京都地裁が労災認定で初となる判断を示しました。
仕事中の事故で、顔や首にやけどを負った男性が、
労災の障害認定で、11級の認定を受けたことを不服として、
国と争った裁判です。
労災認定で使われている現在の障害等級表では、
7級 女子の外貌に著しい醜状を残すもの
12級 男子の外貌に著しい醜状を残すもの
女子の外貌に醜状を残すもの
14級 男子の外貌に醜状を残すもの
と記載されています。
同じ傷跡でも、
給付については、7級までは年金、8級から14級は一時金です。
上記の等級表で、外貌の傷跡に関しては、女性に手厚いということが
お分かり頂けたと思います。
提訴した男性は、
「日常的に露出する部位」である顔等についての、国の定めた認定基準に
男女差別があるのは、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとして
処分の取り消しを求めたのです。
●国の言い分
・労働職調査における女性の就労実態が接客など応接を要する職種への
従事割合が高いこと
・化粧品の売上等から、女性が男性に比して外見に高い関心を持つ傾向
があることがうかがわれ、外見の醜状障害による精神的苦痛の程度について
明らかな差がある
と国は主張しました。
●判決論旨
しかし、判決の論旨では、以下のような判断が示されました。
・外見への関心の程度や性別が、精神的苦痛の程度と強い相関関係にある
とまでは言えない
・等級表では、年齢、職種、経験など職業能力的条件について、障害の程度
を決める要素となっていない
・性別が、上記の条件と質的に大きく異なるとは言い難い
よって、外見の醜状障害についてのみ、性別によって大きな差が設けられている
不合理さは著しく、合理的な理由のない差別的取り扱いであり、
障害等級表は憲法に違反すると判断せざるを得ない。
●西尾の解説
労働者災害補償保険、労災保険は、戦後間もない1947年に施行されました。
労災の障害等級表は、施行時のまま、今日まで見直されていませんでした。
その後、この労災の障害等級表は、
「自動車損害賠償保障法」の後遺障害等級に引き継がれています。
また、1981年施行の「犯罪被害者等給付金支給法」も
同じ障害等級表で、いずれも、この男女差のある障害等級表が
適用されています。
2007年には、男性も含めた「性差別」に表現を改めた
「改正男女雇用機会均等法」が施行され、「女性差別」と同様に
「男性差別」もなくそうとする、新しい「男女平等社会」への認識の
高まりが、一審から憲法判断に踏み込む画期的な内容の判決となった
という見方があります。
6月10日が控訴期限でしたが、厚生労働省労災補償部は、
「男女差を設けることについて、合理性を立証するのは難しいと判断した。」
と、国として控訴しないことを決定しました。
これを受け、厚生労働省は、障害等級表の改定を目指すとしています。
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