★保険&年金基礎知識〜通勤災害のポイントその2〜
前回は、
1.就業に関し
2.住居と就業の場所を
の二つの項目について
通勤災害と認められるかどうかについて
お話しました。
今回は、
3.合理的な経路及び方法により往復すること
4.業務の性質を有するものを除くもの
について、
通勤災害と認められるかどうかの
ポイントをお話して行きますね。
●まず、3から
○「合理的な経路」とは?
住居と就業の場所との間の往復に、一般に用いる経路をいいます。
会社に届出をしているバス等通常利用する経路
及び通常これに代替することが考えられる経路等が
合理的な経路となります。
タクシー等を利用する場合は、当然ルートは2から3ありますので、
複数の経路も、合理的な経路です。
通常の経路が工事中や交通事情で迂回する場合、
子供を託児所等に預けるためにとる経路等は、
そのような立場にある労働者であれば、
「就業のために」とらざるを得ない経路であり、
合理的な経路となるものと認められます。
ただし、特段の「合理的な」理由もなく、著しく遠回りとなるような経路は、
合理的な経路とは認められないことになります。
・共働きのご夫婦の就業先が同一方向にあるため、毎朝一緒にマイカー
通勤をし、夫の勤め先の近くにある妻の勤め先前で妻を下し、夫の
勤め先に向かう途中で起きた事故は通勤災害と認められるか?
○です。
二人の就業先があまり離れておらず、この状況が常態化している場合は、
「合理的な経路」とみなされます。
ここで、よく問題になる「逸脱」と「中断」についてお話しましょう。
「逸脱」とは、通勤経路上で、就業又は通勤とは関係のない目的で、
「合理的な経路」を外れること。
「中断」とは、通勤経路上で通勤とは関係のない行為を行うこと。
通勤途中で、日用品の購入、選挙権の行使、医療機関での受診行為等
の日常生活上必要な行為を最小限度の範囲内で行う場合は、
「逸脱」、「中断」の間を除き、合理的な経路に戻った後には、
通勤災害と認められます。
ただし、帰宅途中に、映画を見たり、飲みに行ったりして、長時間経路を
「逸脱」した場合、その後通勤経路に戻り事故に遭っても、
通勤経路通勤災害とは認められません。
・帰宅途中、お惣菜を買うために友人の経営するお惣菜屋さんに立ち寄り
2時間おしゃべりしたあと、店舗内で滑って転び怪我をした場合は?
×です。
この場合、日常生活上必要な行為であっても最小限度とは認められず、
また、経路を逸脱した間の事故であるため、通勤災害とは認められません。
住居と就業の場所との往復に労働者が用いる方法として、認められたもの
を言います。
公共交通機関の利用、自動車や自転車を本来の用法に従い使用する
場合、徒歩等、通常用いられる方法は、いつも用いているか否かに
かかわらず、一般的な方法といえます。
しかし、自動車の無免許、泥酔しての運転は合理的な方法とは認められ
ません。
ただし、免許の不携帯は、必ずしも合理性を欠くとはいえず、労災保険の
給付制限に留められる場合があります。
●次に、4です
就業に際し、住居と就業場所を合理的な経路及び方法で往復する行為
が、「業務災害」と解される場合があります。
業務とみなされた場合は、業務災害であり、通勤災害ではないよという
ことなのです。
どのような場合か、といいますと、
・駅から事業所までの送迎バスに乗車中の事故
送迎バスの利用は、事業主の支配下にあるとみなされ
業務起因性が認められます。
・休日や休暇中の会社からの緊急呼び出しで予定外に緊急出勤途上の
事故
業務命令に従って出勤する途中の事故であり、業務災害として
認められます。
つまり、通勤災害と認められるのは、通勤途上で、まだ事業主の
支配下にあるとはいえない場合なのです。
●西尾の解説
帰宅途中で暴漢に襲われての怪我、ひったくりにあっての負傷のような
第三者の暴行傷害行為に起因する災害については、
その発生状況にもよりますが、
通勤に通常内在する危険が具体化したものとは認められず、
一般的には通勤災害には該当しません。
ただし、寂しい場所や、遅い時間帯に帰宅しなければならない場合、
同種の事件が多発しているなどの状況があれば通勤災害と認められる
ケースもあります。
野犬に咬まれた事例では、経験則に鑑み、通勤経路となる屋外で
一般的に発生しうる危険が具体化したものとして通勤災害として
認められた、というケースがあります。
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