★保険&年金基礎知識〜年金の記録の歴史〜
10月12日から3年の予定で、
年金の記録原簿である紙台帳と、コンピューター上の記録を突き合わせる
作業が始まりました。
約6億件の記録の照合を進めていくことになります。
では、年金制度発足当時は、どのように年金記録を作成していた
のでしょうか?
まずは、厚生年金から
●厚生年金保険の前身は?
昭和16年3月、まさに太平洋戦争突入という戦時体制下に公布され、
翌17年6月に全面施行された「労働者年金保険法」による
労働者年金保険は厚生年金保険の前身です。
発足当時の適用範囲は、工場等の現業に勤務する男子のみでした。
労働者年金保険の施行時の記録管理事務は、
厚生省保険院で行われ、
「被保険者台帳索引票」を作成して、その当時の被保険者記録の整理、
保管を行っていました。
●労働者年金から厚生年金へ
労働者年金保険は、
昭和19年に「厚生年金保険」と名称を変え、
適用範囲も、事務職男子、女子へと拡大。
当然、台帳も膨大になりました。
戦争末期になり、索引票、被保険者台帳の焼失を防ぐため、
その業務を都道府県、社会保険出張所に移管し、
厚生省保険局(保険院から改組)では、索引票の整理・保管業務
のみの業務となりました。
●記録の二重管理の是正
索引票が、厚生省と地方に分割されたため、同じ人物に何枚もの
台帳が作られる事態が起きてきました。
この事態を改善するために、昭和25年から5年間を費やして、
索引票の整備を行い、
索引票は、「被保険者台帳記号番号払出票」と改められました。
●磁気テープ管理へ
昭和37年から、記録管理に磁気テープ方式が取り入れられました。
被保険者台帳は、現存台帳(昭和32年10月現在被保険者である者)
から磁気テープ化の作業が始まり、昭和52年に完了したといわれています。
そして、国民年金は?
国民年金制度は、「国民皆年金」を成立目的としていますが、
保険料徴収方法に議論が集中し、肝心な記録管理は後回しに
された感があります。
●徴収業務は昭和36年から
国民年金の保険料徴収が開始されたのは、昭和36年4月です。
ところが、年金記録管理が開始されたのは、実にその6年後に
予算が組まれてからのことなのです。
●事務の三重構造
国民年金法第3条には、
「国民年金事業の一部は、都道府県又は市町村に行わせることが
できる」とされており、記録管理については、
国、都道府県、市町村の3重構造になっています。
当初から、記録管理の責任の所在が明らかでなくなる恐れはあったといえます。
●事務の実態
市町村で適用事務、保険料収納業務を行っていたことから、
被保険者記録は、市町村の「被保険者名簿」により管理されていました。
昭和40年、都道府県で、さん孔テープを作成し、社会保険庁業務課に
送付し、ここで磁気テープに変換されていました。
市町村に、「受付処理簿」、「被保険者名簿」、「被保険者名簿索引票」
を各々保存期間を定めて、備え付けさせました。
そして、オンライン化
昭和60年のオンライン化に伴い、社会保険庁は、
「マイクロフィルムに移行させた各種の台帳については、破棄すること。」
という指示を出し、以降の際に発生した氏名等の誤表記等の処理について
再調査出来る資料を自ら葬ってしまったのです。
●西尾は思います
年金のご相談を受ける身としては、
ご相談者の年金への期待、信頼、安心感をひしひしと感じます。
年金制度がスタートした当初から、程度の差はあれ、被保険者は
なにがしかの期待を寄せていたと思います。
年金の基礎であるところの「記録」が、
国民の信頼を寄せるに足るような、管理がなされていなかったことに
腹の底からの怒りを覚えます。
今後、コンピュータ任せでない、被保険者記録管理がなされていくよう
しっかりと、過去を検証し、現在を監視し、未来を設計しなければならない
と私は思います。
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★トピックス〜労災審査請求についての改正点〜
労災の保険給付の決定に不服があるときは、審査官に審査請求することが
出来ます。
審査請求をした場合、これまでは、不支給決定の理由等を記載した
労働基準監督署長からの意見書は、審査請求人に提示
されませんでした。
審査請求のより一層公正かつ迅速な処理のため、
今年の10月1日以降に審査請求が出された事案については、
監督署長の意見書を事前に審査請求人に提示し、
処分理由を明らかにした上で審査を行うことになりました。
元々、審査請求をするのは、不支給理由が知りたいという
もっともな理由から行うのですから、
門前払いのような従来の審査から一歩踏み出したことになります。
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